【中国アニメのレベル】中国アニメが日本アニメ業界を潰す将来は来るのか


アニメやゲームといった二次元のサブカルチャーは日本が誇る世界的な文化・産業であることは間違いないでしょう。しかし、日本が誇るアニメやゲームといったコンテンツはすでに「日本だけが作れるもの」ではなくなりつつあります。特に日本にとって驚異的なのが、隣国の中国のアニメやゲームといった文化的産業の異常な進化です。

中国のアニメについて、有名アニメクリエイターもその急激な技術の進歩について言及しています。「君の名は。」が大ヒットしたことでお馴染みの新海誠監督も中国のアニメ産業について、「日本の技術が中国を大きくリードしているとは思わない」ソフトにしても、技術にしても、基本的には同じレベルにある」と語っています。

筆者としても、ここ最近の中国アニメのレベルの高さには驚いています。2016年に中国で公開された『大魚海棠』は、「中国のアニメがジブリを抜いた」と視聴者を唸らせるほどの映像美。日本でも吹き替え版が2018年の8月よりNetFlixで視聴可能になりました。

なぜ最近になり中国アニメのレベルがここまで高まってきたのでしょうか。こうした中国アニメのレベルの高まりを見ると、日本アニメの地位が脅かされてしまうのではないかと少し心配になってしまいますよね。今回は中国アニメのクオリティの高まりの要因と、日本アニメへの影響を考察していきたいと思います。

中国アニメのレベルはなぜ急激に上がったのか

中国の急激なアニメのレベルの急激な向上の要因はなんだったのでしょうか。その要素を分解していくと、様々な理由が見えてきました。

国を挙げての文化産業の強化

中国アニメ産業の興隆の背景として、国を挙げての「文化産業の強化」が挙げられます。経済発展に伴い豊かになっていく物質的生活に加え、精神的な生活水準も向上させようとし、中国政府が動画産業やゲーム産業といった文化的産業を後押ししているのです。主な例として、杭州政府のアニメ産業の支援政策では、企業の対する資金援助の他、作品が放送された時の奨励金、税金の免除や家賃手当といった様々な支援項目が用意されています。(これらはほんの一部です)

その結果アニメ産業に関してはここ10年で急激な伸びを示しており、1993年から2005年の間に中国国内で製作されたアニメ作品が205作品・時間にして11万1600分であったものが、2012年においては一年間で395作品・時間にして22万2938分もの作品が製作されています。

アニメーターや声優を養成する学校も都市部を中心に急増しており、大学にも学科が新設されるなど、教育面においても力を入れているようです。

参照:中国における文化産業振興政策がアニメ産業およびゲーム産業の発展に与えた影響に対する一考察

日本からの優秀な人材の確保

中国のアニメ産業は発展途上の段階ということもあり、人材への投資も惜しまずに行っています。中国のアニメ業界の待遇は日本以上です。日本のアニメ業界の労働環境は低賃金・重労働といったワーキングプアが問題視されていることもあり、何倍もの好待遇の中国に喜んで発つアニメーターが多いそう。実際に募集されている日本人の求人を見てみると、月収31万円に加え昇級の福利厚生や無料マンションの支援など「本当にアニメ業界か?」というような好条件が並んでいました。ち

中国アニメの台頭により日本アニメの地位は危うくなる?

中国のアニメ産業が盛り上げるに連れ、界隈では「日本のアニメ産業の世界的な地位が中国に奪われてしまうのでは?」といった声を数多く耳にします。しかし、筆者の見解では、日本のアニメのレベルまで到達するにはまだ当分かかると感じます。とはいえ、中国のアニメ産業の盛り上がりが日本のアニメ業界に既に与えている影響は大きいです。

「目に見えない部分」は日本の圧勝

確かに中国アニメのクオリティは上がりました。しかし、そのクオリティの伸びの多くはグラフィックや演出のいった「表面的」なものが主です。アニメの価値を高める要素としてグラフィックの美しさや演出は大切ですが、それが全てではありません。アニメはグラフィック以外にも、脚本・声優・音楽・背景といった様々な要素により構成されています。まだグラフィック以外の要素に関しては中国は後発していることは間違いありません。

また、人材や製作ワークフローの管理能力、作品の価値観や成功するためのノウハウなど、経験により蓄積される部分は圧倒的に日本が勝っています。こうしたアニメの「目に見えない部分」をいかに進化させていくかが、中国アニメの今後にも大きく関わってくるでしょう。

中国の規制が足かせになる

ネットの情報規制などで知られているように、中国ではについての規制が未だに厳しい現状がある。エロやバイオレンスといった描写をアニメの中に取り入れることは規制の対象となりかねないため、アニメの表現の幅がどうしても狭まってしまいます。日本から輸出されるアニメやゲーム作品も、中国に持ち込まれる際は違反するシーンは別のものに移し替えられています。

しかしマーケットの縮小は致命的

技術面で中国アニメに抜かれることより、中国のアニメ市場の拡大を日本は危惧するべきだと筆者は感じます。中国のアニメ市場は毎年20%ベースで拡大しており、2016年にはアニメの市場規模だけで2兆円を突破。中国のコンテンツ産業全体で20兆円なので、その5%をアニメが占めています。この数字は日本とほぼ同じ水準です。

中国は日本アニメの主な輸出先ということもあり日本にとっては大変嬉しいことのように感じますが、近年中国のテレビは日本のアニメの放映に規制をかけ始めています。自国の産業を育てるために取る政策としてはまっとうですが、日本にとってはかなりの痛手です。

収益構造は中国に学ばなければいずれ負ける

前項では少し楽観的な見解をしましたが、日本のアニメ産業の収益構造のモデルを変えない限り、将来的に確実に日本のアニメ産業は中国に抜かれると思います。抜かれるというより「廃れる」と表現した方が良いかもしれません。日本のアニメ産業に従事する人の待遇の悪さからアニメーターの人材は不足し始めており、そのせいで老舗のアニメ製作会社が潰れる話も近年ありましたよね。

日本のアニメ産業の収益構造として、アニメの製作委員会がテレビ局に金を払って放映時間を買うケースががあります。しかし、中国では逆にテレビ局がお金を出してアニメを買うのです。中国はテレビ曲や出版社などのプラットフォーム側がアニメコンテンツを買うモデルが採用されており、日本と比べアニメ製作会社が儲かる構造になっています。クリエイターの収入が増えるような取り組みをしており、このおかげでさらに人材や投資が増え、中国アニメはさらに進化していくことが予想されます。

日本は現状のアニメーターへの待遇問題や業界全体の構造を変えない限り、中国アニメに抜かれる一途を辿るしかないように思います。

中国アニメのまとめ

中国のアニメ産業の事情を筆者なりに少しまとめてみました。中国のアニメのレベルの向上は国や自治体の協力も追い風となり、すでに技術面は日本と肉薄している状態です。将来的には日本アニメが中国アニメに追い抜かれる可能性も大いにあります。

ただ、そもそもアニメ自体に「勝ち負け」はないですよね。産業全体の収益や規模感は数字として出せますが、本当の勝ち負けって「作品自体」だと思います。日本作品であれ中国作品であれ、素晴らしい作品は称賛しあうことが大切なのではないでしょうか。

「君の名は。」が大ヒットしたからといって、宮崎駿監督の素晴らしい作品が廃れることなんてなかったですよね。良い作品はよい作品として後世に語り注がれていくのです。

中国アニメの動向より、今後も日本が後世に残るような作品を作り続けることが出来るか、ここが大切なところかもしれませんね。

投稿者プロフィール

エキサイティング中岡
エキサイティング中岡
読書が趣味の20代♂。留学中に日本のアニメ文化が海外で広く愛されていることを知り、アニメの世界にのめり込むように。あえてマイナーな作品を見るのが好きです。現在はフィリピンに滞在しています。

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